岩崎正人『子供をゲーム依存症から救う精神科医の治療法』  

表題の本から必要な知識を整理しておく。

一般に依存症には3種類ある。物質依存症(酒など)、プロセス依存症(ギャンブルやゲーム、ネット)、関係依存症(DV、恋愛)。本稿の主題ではないが関係依存症の説明が良かったので抜粋しておく。

 『関係依存症(共依存)』とは、その名の通り『関係』に依存する。主に人間同士の関係を指す。互いに傷つけ合うにもかかわらず、離れることができないDV(ドメスティック・バイオレンス)や恋愛依存症などがある。
 関係依存症になる人は、支配的な対人関係が特徴である。相手を自分の思うように操作するために威嚇する、あるいはとことん世話を焼いて骨抜きにしてしまうのだ。他には、脅迫、弱みを見せて同情を買う、他人の悪口を言って自分に関心を向けさせる方法がある。
 関係依存症が選ぶパートナーは、同じような支配的な人である。類は友を呼ぶのだ。お互いに主導権をつかもうと、支配合戦にしのぎを削る(この状態を共依存と呼ぶ)ので、衝突は避けられない。衝突の後に冷却期間ができるが、再び支配権をめぐる争いとなり、このパターンを繰り返す。悪循環を断つために別離を望むが、すぐに思いは萎む。それは支配的な人は支配することができるパートナーを必要としているからである。逆に、パートナー側からみれば『相手から必要とされている』というメッセージを受け取ることになる。したがって、パートナーは支配的な人から暴力を振るわれても、別れられないのだ。
 支配的な人間関係は、あらゆる所に現れる。
 親子であれば過保護、過干渉な親になる。友人関係ではつねにリーダーシップをとり、仕切る側になる。兄弟姉妹に対しては、年下の者を家来にする。
 他者との力関係に敏感で、自分より強い者に対しては卑屈になり、弱い者に対しては尊大に振る舞う傾向がある。

これに完全に当てはまる知り合いがいる。共依存だと分かっているのに離れられない。離れたつもりでもまた戻ってしまう。そんなことをもう何十年もやっている。生徒の家庭にもこれに当てはまるケースは多い。毎年出くわすのだからかなりの確率だ。十分に自立しないまま親になる人がそれだけ多いということだ。共依存にさせられた子どものほうは大変だ。ハンディを背負って自力で自立しなければならない。

そろそろ本題に入ろう。ゲーム依存症になりかけている子どもに対して、親はメッセージを伝えるのがよいという。素直に気持ちを表現するのが効果的なのだそうだ。たとえば「いつもお前のことを考えている」「心配している」「悩みがあったら相談してほしい」など。

毎日3~4時間ゲームをするようになり、生活に支障がきたすよう状態になったらゲーム依存症である。WHOは今年、「ゲーム障害」を精神疾患と認定した。その定義は、日常生活に支障が出てもゲームを優先する状態が12カ月以上みられる場合である。この場合に親はどういう対応をすればいいのか。
まずは当然ルールを守るように説得を試みるのだが、子どもは聞く耳を持たないことが多い。そこで最終手段としてゲーム機の取り上げが検討される。しかし強制執行すると子どもは強烈に反発する。納得していないので、どんな手段を使ってもゲームをしようとする。友だちの家に入り浸るようになったり、ゲームセンターに通い詰めるようになったり、なんとかして自力でゲーム機を用意したりする。かえって状況は悪化する。
ひとつのアイデアとしては、ゲーム機を取り上げる際に別の物(犬や釣り竿や自転車など)を買ってあげる方法がある。交換条件を提示して取引するのだ。本当なら親子で向き合って改善すべきだが、頭ごなしに取り上げるよりはマシだろう。

手に負えないなら速やかに専門機関に相談すべきだ。各県に「精神保健福祉センター」というのがあるらしいので問い合わせることだ。専門機関での治療については次の通りになる。
まず、衝動性を抑える必要があるときは薬物療法が効果的だ。とくに合併疾患がある場合にはそちらを先に治療したほうがいい。
次に集団療法である。依存症治療で最も有効なのがこれだ。また、現実逃避としてゲームに依存している場合は、現実の生きにくさを改善するのが有効だ。そのために認知行動療法がある。最後に、ゲーム依存になる人はコミュニケーションスキルが不足していることが多いので、そのトレーニングをすること。以上が専門機関での治療内容である。

家族による適切な対処法を整理しておく。ゲーム依存症者が少年か青年かによって、対応が異なる。子供の場合、親は子供の状態を的確に把握するため、まず専門機関へ受診させる。子供は親の言うことにしたがって、一度は受診する。そのとき子供はゲームによるトラブルは何もないと答えることが多い。この場合は治療を無理強いしないほうがいい。長続きしないからだ。再び悪化したタイミングで治療を始めればいい。また、他に心の病がある場合もあるので、それを見極めるためにもまず専門家に見せるのがよい。

青年の場合はもう親の言うことを聞いて治療してくれないので、本人に責任を取らせるという荒療治をして、目をさまさせる。本人に問題に向き合わさせ、自覚を促すことでモチベーションを高めるのだ。つまり、親は支援しないことが肝心となる。具体的には、朝起こさない、だらしない生活に対して説教することをやめる、何くれと小言を言わない。

ところで、少年と青年の線引きはどこにあるのか。本書では明示されていない。厚生労働省によると14歳までが少年で、15歳から青年になるという。

依存症は繰り返す。回復したと思っても、対象を変えて繰り返す。そうならないためには、依存症治療の過程で自分自身を深く見つめ直すことだ。それが出来れば依存症のスパイラルから抜け出せる。著者は精神科医だが、この人も「問題に正面から向き合え」と説く人だ。あとがきで親へのエールとしてこう書いている。

親が子供をゲーム依存症から守るための切り札。それは、親が自分の人生に対して真正面から向き合うことだ。

突き詰めればそういうことなのだと私も思う。親の生きざまが子供から見て説得力をもつかどうか。心を打つような真っすぐな生き方をしているかどうか。子供が正しく導かれるかどうかはそこにかかっていると思う。

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